この記事の流れ
カウンセラーやセラピストとして人気者になる方法のひとつとして出版があります。「本を出したい」と願っている人も少なくないと思います。
また、お気に入りのカウンセラーやセラピストの本が出版されるたびに買って勉強している人もいるでしょう。
現在では、書籍の累計販売が300万部を超えている著者もいます。
ところが、売れている著者ほど、アマゾンの書評レビューの点数が低いと思うことはありませんか?
Amazonで注文しようと思ったら、ひどいレビューが書いてある。ファンの方からすれば腹が立つこともあるかもしれません。
実際、著者の方でも、腹を立てたりしないものの、批判的な書評を気持ちいいと思う人はいません。
なぜ、カウンセリング系の著者は売れるほど、Amazonレビューの点数が下がるのか?
コンサルタントの立場から考察した見解をお伝えします。
ベストセラー著者も人間
先日、累計300万部の自己啓発系の著者と話をしている際、書籍の評価の話になりました。
彼が言うには、
なぜ、わざわざ悪意のある書評をなぜ書くのか?
しかも、内容を曲解していて、こちらの意図から外れた批判をされる。
本を出すたびに、どの本も同じ内容だと言われる。
ブログやSNSで反論したらキレていると言われる。
というのが大まかな話です。
この話は彼に限らず、多作のベストセラー作家(と言うのかな?累計販売を)にはついて回る話です。批判的な意見は、大方は無視をしていますが、彼らも人間なので、自分に対する批判を好意的には受け取れません。しかも、意図を外した批判に関しては、若干の憤りを感じるのが当たり前です。
ビジネス著書の世界では、聖人君子と言われているような著者でも、「意図を外した的外れの書評を読むと残念な気持ちになります。」と講演で話すくらいなので、批判的な書評を快くは思うことができないのは当たり前です。
人気者が2チャンネルを見ないように、Amazonの書評を見ないようにしている著者も少なくありません。とはいえ、世間の評価も気になるので覗いてみると、批判的な書評がアップされていることもあります。
私は、友人、知人にベストセラー作家が多いので、そのような話になることがあります。私は著書が2冊あり、韓国版も出版されましたが、売れなかったため、批判は受けていません。実はここ大切なポイントで、なぜ、人はベストセラー作家を批判するのかについて、勝手に考えて意見を申し上げたいと思います。
レビューの点数が低いのは、ベストセラーの絶対条件
どんな世界でも人気者になれば、その人が嫌いだと言う人も増えます。これは仕方がありません。高い評価を得ている作家でも、賞を受賞した作品でも、多くの人が手にすれば、批判的な意見も増えていきます。
Amazonのレビューを見ると、村上春樹でも3点台又吉直樹の「火花」も同様の3点台です。「火花」に関しては、1378レビューのうち1点を281人がつけています(2017年6月2日現在)。実に、1点が約20%ですから、作品の内容よりも人物批判も交じっていると思われます。
全体的な傾向だと言えると思いますが、レビュー数が多い本ほど売れています。売れている本ほど点数が低い傾向にあります。
逆に言えば、批判を受けるとは、マーケティングが成功しているということでもあります。ファンの人だけが読んでいる場合や、ターゲットにしている読者だけに読まれている場合は、批判的な話は少なくなります。ファン以外の人、もともとターゲットでもない人が読んでいるから批判が出ているのです。つまり、売れているということでもあります。
結果、女性の読者向けに生き方の本を書いたら、男性の読者から批判が出たというような話になるのです。
基本、ほっとけばいいのですが、せっかくの読者ですから、「あんたに読んでほしくない」と言わずに、批判的な人をファンにする気持ちで、「なぜ、批判的なレビューを書くのか?」について考えてみたいと思います。
なぜ、わざわざ批判的なレビューを書くのか?
Amazonに批判的なレビュー(しかも、結構長い文章で)を書く理由は、
読書好きで暇だから
だと思います。
別に揶揄しているわけではありません。著者への反論的な意見もあると思いますが、これから本を買う人への参考になるようにとの善なる心があることを忘れてはいけません。
基本的に善なる人のはずが、なぜ批判的になってしまうのか?
本の内容が本当に悪辣な場合を除き(そんな本はほぼありませんが)
彼らに、
勉強した知識のアウトプットの場所がないことが原因ではないかと思います。
(著書の内容そのものはそれほど関係がない場合もあります)
きっと彼らは頭がよくて、自分でも自分の頭の良さを自覚しています。そんな意味では自尊心が高いのです。では、自尊心が高いはずの人が、わざわざ人を批判する理由はなにか?
自分の評価が低いと感じているからです。
「自分はもっと高い評価を受けるはずなのに」という思いが、批判として出てしまうのです。
その根底にあるのは、
嫉妬
です。
要は、「自分の方が優れている(もしくは同等)の話ができるのに、なぜ、この人の方が圧倒的に人気者なのか?それはおかしい」というメッセージなのですね。
批判的なレビューの文体から推測するに多くは男性または、男性脳の女性(論理的という意味)です。
では、論理的な批判がなされているとかいえば、そうとは言えません。
批判的なレビューを分類すると
・考え方が違う
・例外もあるのではないか?
・決めつけではないか?
・趣味が合わない
・やってもうまくいかなかった
というように、論理的に書かれているようで、実は個人的な感情をぶつけているものがほとんどです。
つまり、批判的な書評を書く人は、
頭がいいけど賢くはない、自尊心は高いけど自分の思うような評価を得られず、悶々としている人ということになります。
仮に同じ能力を持っているとしても、世の中には評価されている人とそうでない人がいます。また、批判をする側とされる側に分かれます。
これは法則と言っていいと思うのですが、
常に「批判する側とされる側では、される側の立場が上」です。
ですから、賢い人は、自分を低めてしまうような人の批判をしたりしないのです。ここが人気者になるかどうかの分岐点でもあります。
書籍のレベルが下がっていないか?
もちろん、本を書く側(著者)と出す側(出版社)に責任がないとは思いません。
活字の本が売れないので、本を売るために「薄くて軽い、文字の少ない」本が作られる傾向にあります。また、3000部以上売れないと赤字になるので、新人著者よりは売れている実績のある著者の本を出したがります。
こうして、売れた実績のある著者は、次から次に本を出します。しかし、そんなに新しい考えがどんどん出てくるはずもなく、切り口を変えた「同じ内容の本」が量産されます。
ですから、「どの本も同じような内容」という批判は外れてはいません。しかし、出版社が違うので、編集者としては常に新しいと感じています。この点は、読者の感想が正しいこともあると思います。
もう1点、書籍のレベルが下がっている理由に
意見と事実をごちゃごちゃにしていることがあります。
カウンセリング系の本は、心を軽くする、お金を儲けるなどの、ノウハウを提供する内容になっています。再現性のある内容にするために、何らかの「理論」が示されます。
ここが問題で、「理論」は「その人が提唱する方法(意見)」と「普遍的な法則(事実)」に分かれます。
多くのノウハウ本は、意見としての理論が書かれているので、違う意見が出てくるのは当然です。逆に法則には例外がないので、批判は出ません。しかし、法則は当たり前の事なので、本にはできないという問題があります。
例えば
「3日断食すれば基礎代謝に応じて体重が減る」
これは法則ですが、こんな本は買う人がいないと思われます。
ですから、
「食事を減らさずに3キロやせる」
という方がいいわけです。
実際は、食べたら体重が増加するというのが法則ですから、「何を食べる」「どう食べる」「食べた後に運動する」などの意見としての理論が述べられます。
ところが、人によって体質が違うので、著者の食べ方ではやせない人も出てきます。また、基礎代謝が違えば、体重の減り方や筋肉の付き方も違います。こうして、例外となった人や例外の人を知っている人は批判をするようになります。
批判されずにベストセラーを出す方法
この話をすると、事実を書けば批判はされないが、面白い内容にならないのではないか?という意見もあると思います。
事実を書いて、面白い内容にして、批判をかわすことができるのが「データ」です。
「学力の経済学」というベストセラー本があります。教育の関心は高く、これまでの常識を疑う内容はとても強い関心を引きます。
著者の中室牧子さんは大学教員で、子供はいらっしゃらないようです。また、現場での教育経験もありません。
そんな人が教育について語ることができる理由は、教育を研究してデータを活用しているからです。
著書の中で
「ほめれば子供は伸びるのか?」という項目があります(ここで伸びるというのは学力が上がるという意味です)
子供をほめて育てようという考えが浸透しています。セラピーやカウンセリングに関わっている人から見れば、常識になっているかもしれません。
「ほめる→自尊心が上がる→やる気が出る→成績が上がる」というサイクルですね。
これを見る限り、正しいサイクルのように見えますが、ほめたら成績が上がったというデータでは検証できなかったようです。
自尊心の高い子供の成績はよいようですが、自尊心が上がるから成績が上がるのではなく、成績のいい子供は自尊心が高いという相関関係でしかないと想定されています。
逆に根拠なく「あなたはやればできるのよ」というほめ方は、実力のないナルシストを育成するかもしれないとも考えられています。
では、「頭がいいのね」と「よくがんばったわね」はどちらが子供のやる気を伸ばすでしょうか?
カウンセリング理論の感覚的なものでなく、「よくがんばったわね」と能力ではなく、努力の過程をほめることでやる気が高まるというデータが出ています。
そんな意味では、カウンセラーが話す「あなたはあなたのままでいい」というのは疑問が残るわけです。そして、このあたりが「意見」の突っ込まれどころになるわけです。
このようにデータから導き出した法則を語る限り、批判を受けることは少なくなります。
一方で感覚的な知識と自分の経験による方法論は、著者の意見でしかないので、当然突っ込まれどころがあります。どちらがいいと言っているのではなく、そういうものなのです。
この点を著者も編集者も知っておくことが大切だと思います。
意見を語っているのに、批判をされていない人は?
カウンセリングや自己併発系の著者の中で、ファンが多く(本が入れているという意味)、批判が少ない(Amazonレビューの点数が高い)のは、斎藤一人さんと本田健さんではないかと思います。
なぜ、このふたりは批判を受けないのか?
本田さんの場合、批判を受けないのは、
限りなく事実に近い意見を語っているからです。
著書のタイトルを見ればよくわかります。
「幸せな小金持ちという生き方」
「幸せな経済自由人の60の習慣」
という具合に、
「〇〇をする方法」に見えて、実際は「成功した人がやっている方法」(事実)を紹介しているので、批判のしようがありません。
批判されている著者の本のタイトルは、「非常識な方法でよい結果を出す」というタイトルになっていることが多く、中身が意見であるので、突っ込まれどころが満載なわけです。
次に「非常識な成功法則」を書いている斎藤一人さんが批判されない理由を考えてみます。
最初の著作は「変な人が書いた成功法則」ですね。最初から「私は変な人」だというブランディングをしているので、どんな批判を受けても、「私は変なことを言っていますからね」ですむわけです。
講演会でも必ず、「私の言うことは信じる必要はないですよ」と話をなさっています。
「普通ではない」と先に言っているので、斎藤さんの話を批判のしようがありません。
批判を受けてから「万人に向けて書いているのではない。」というのは、後付けの反論です。誰にでもできそうなノウハウであるタイトルをつけておいてそれは通りません。
しかし、斎藤さんのように、最初から「万人向けでない」と言っておくことは先手です。
最初からわかってやっていたのか、人柄なのかは不明ですが、この二人は他のベストセラー作家よりもランクが上だと思います。
また、二人に共通しているのは、メディアに顔を出していないということです。
実は、批判と露出というのは大きな関係があると思います。
ほとんど、著作の内容は関係のない話になってきましたが、批判とはそういうものです。
タレント化すると妬まれる
星野リゾートの星野さんがリーダーの条件として、「成功するほど質素にふるまう」と言う話をしています。社長が派手な生活をしていると社員がやる気をなくすということが理由です。
実は、カウンセリングや自己啓発の著者にも同じようなことが言えます。人気が出て、お金を稼ぐようになると、ファンは嫉妬するのです。嫉妬だけでなく、結果が出なかった人は自己責任を忘れて、著者のせいだと思うので、怒りの感情を持っていることも少なくありません。
お金儲けの方法を教えている人でない限り、ファンは著者に質素倹約、温厚で、誰にでもわけ隔てない人間力を求めています。
成功をして、オシャレになり、海外旅行をしたり、いい部屋に住みたい気持ちはわかりますし、それ自体は肯定します。しかし、それを見せる必要はないかもしれません。
カウンセリング系の著者が批判を受けるようになるタイミングはタレント化した時です。しかし、タレントではないので、外見やライフスタイルで勝負はできません。著者史上、最高にかっこよく、きれいになったとしてもタレント(芸能関係の人)にはかないません。
この見解が間違っていない証拠に、
人気者になってから出版した書籍のレビューで評価が低いものの中には、
・性格が悪い
・詐欺みたいなセミナーでお金儲けをしている
というように、書籍の内容と関係のないものが増えてきます。
そんな意味では、
メディアに露出しない本田健さん、斎藤一人さん、質素なふるまいをしている星野さんは、わかっている人だなと思うのです。
よりよい書籍文化の形成のために
ここまで批判的なAmazonレビューについて書いてきました。
結論めいたことを書くのは難しいのですが、著者の方々にもご理解いただきたいのは、批判している人も読者であるということです。
出版不況の折、貴重な読者を失っていくことは、業界全体の下降に拍車を掛けます。さりとて、理解が難しい批判に耳を傾けろとは言いません。気分が悪いものは悪くていいのです。
ですから、次回作は、批判をしている人が唸るくらいのレベルの書籍を出版していただきたいと思うのです。
「批判は受け入れる」「相手と自分は違う」
こうした話は、みなさんが著書の中で話していることです。曲解されていることは残念ですが、多くの人がより正しく理解ができる書籍を書いていただくことを期待します。
お釈迦様は仏教に理解を示さない人は関係ない
キリスト様はキリスト教徒以外のことはどうでもいい
とは言っていないはず。
せっかく、社会的に影響力のある立場を手に入れたのですから、「わかる人のだけ」と言わずに、もうひと踏ん張りお願いしたいと思います。
まとめ
この記事では、批判的なAmazonレビューを書く人について考察しました。彼らを批判するつもりはありません。それなりの理由もあるのでしょうし、書籍自体のレベルが商業主義に走っていることも一因だと思います。
書籍は人生において、最も投資効果が高く、深い学びを得ることができるツールだと思います。
意見を書いている限り、批判からは逃れることができません。しかし、その意見が多くの人に受け入れられているなら、さらに普遍性の高い法則に昇華させることで、万人を幸せにできるのだと思います。