「プチ起業はコンサルをしてもらえないのですか?」というような問合せをいただいたのは、昨年末のことで、何のことだかよくわからず、「特に起業に関しての区分はありませんけど」とお答えすることにした。
その後に、一度だけやり取りをして、「気持ちが整ったらお願いします。」という具合に仕事の依頼はなかったのだけど、質問の意図が釈然とせず、Google先生に聞いてみたら、1年ほど前にプチ起業論争みたいなことがあったらしく、今でも「プチ起業」で検索するとその手のブログが上位に表示される。
内容をご存じない方は、「プチ起業」で検索をしていただきたい。
ちなみに、僕のクライアントは個人の場合、最低でも年収で1000万円以上の方がほとんどで、スタートアップの人には敷居が高いと思われているようなのだけど、そんなことはないということをお断りして、プチ起業に関する僕の意見を書いておくことにする。
仕事の依頼に関しては、僕のスタンスを検討材料にしてもらえればよいと思います。
これは仕事を引き受けるスタンスの問題で、プチ起業の是非について語っているのではないことをご了承いただきたい。
1:価格は自由に設定してもいい
プチ起業論争の焦点は、価格が安すぎるということになっている。稼ぐ必要のない人(夫の収入で生活できる)が、安すぎる価格でサービスをすれば、本気でやっている人にお客さんが来ないというような内容だ。言われた側は、お客さんが喜ぶのだから何が悪いのか?という話で対抗している。
僕のスタンスとしては価格は自由に設定していただいても構わないと思っている。
この手の話は、外国の安い農産物が入って来るので日本の農家が困るというものと同様に政治的な議論は必要になるレベルで、個人的な論争では解決しえない。
ハンドメイドグッズを安く提供しているから批判されるべきではない。
例えば、
格安のハンドメイドグッズを販売する→お客さんのアドレスを取得する→ハンドメイド教室に集客する(高額)
というビジネスモデルがあってもいいわけだ。
他には、高額化粧品を販売するために格安でエステを提供している会社もある。
しかも美顔器を持ち込んだ本格的なものだ。こんなことをされたら、エステサロンは困るではないかという話はお門違いで、よりよいサービスを考えるしか生き残る道はない。
売るためには価格を下げるのはひとつのセオリーなので、そのこと自体に問題があるわけではない。ただし、安くても売れないものがあるし、安くしか売れないものは、結局のところ、品質を評価されていないので、長続きしないことを想定しておく必要はある。
2:プチ起業でも起業である
起業とは、業を起こすということだ。業とは、「○○業」と言われるように、仕事のことだ。
仕事をするのだから、そこにはお客さんへの貢献があり、従業員を採用したなら責任が発生する。僕のサービスの中で「自宅開業」のサポートがあるのだけど、この場合は、自宅で自分一人が基準になっている。
それでも、
一人社長兼スタッフであるなら、仕事として関わる自分を不幸にしてはいけない。
趣味との違いはここにある。
3:やがて自尊心を損なう価格設定はしない
価格については安くすることは戦略上、有効ではある。しかし、自分のことを考えればわかると思うけど、安いものほど大切にされない傾向がある。
従って、自分が価値のあると思った商品やサービスをお客さんが粗末に扱っていても、そこに文句を言うことはできない。
自信のない人は価格を安くしがちだが、安く設定しすぎれば自信がついても価格を上げることは難しい。
価格設定はお客さんが買ってもらえる価格と同時に、自分の自尊心を損なうことのないように設定していただきたい。
なぜ、価格に関してくどくお話をしているかというと、支払った価格以上の満足感をお客さんに提供するのは簡単ではないからだ。
思い返していただきたいのだけど、この1年間で、「価格以上だった」と思える買い物がいくつあっただろうか?
100均のグッズでも中には、「これで100円?」とプラスにもマイナスにも思えるものがあるはずだ。
「いいものが安いでしょ」と考えるのは売り手の話で、「素人なんだからそんなもんでしょ」とお客さんが思っていても不思議ではない。
僕は安いサービスを提供することで疲弊している人を何人も知っている。
4:継続する
業を起こしたら、大切なことは継続することになる。
理由は簡単で、お客さんがいるからだ。
ハンドメイドグッスを他にも買いたいと言っていただけたのに、「もうやめました」ではお客さんはがっかりしてしまう。
また、アクセサリーなどの場合は修理の依頼があることも考えられるし、アロマやセラピー、整体などの場合は心や体の変調があれば対応する必要がある。
特に、アロマの場合は使用方法を間違えない説明書が必要だし、お客さんが使用法を誤っても事故が起これば製造者の責任なので、PL保険には加入したい。
その前に、法律的に開業届、認可が必要なものは取得しておきことが前提になる。
自宅サロンを開業する際に、チエックしておきたい内容はこちらの記事で紹介している。
「お客様に愛される自宅サロンができるまで~準備編①「計画を立てる前に確認しておきたい事」~」
5:連絡先を明確にする
仕事は売って終わりではない。お客さんに商品やサービスを提供した以上、アフターフォローが必要になる。
返品を希望する人もいるかもしれない。
こうした場合に、
連絡先を明確にしておくことが最低限のフォローとなる。
女性の場合、個人情報を気にして連絡先を曖昧にしている人もいるけど、それはお客さんとしての立場から抜けていないことを自覚していただきたい。
業を起こせば連絡先が明確であることは当然のことだ。自宅や携帯電話の番号を公開することに抵抗があるのは理解できる。
その場合は、仕事の回線を引くか、メールアドレスをきちんとお伝えすることが仕事をする者としての義務だと考えている。
また、価格に関してあまり安くしない方がいいと考えているのは、赤字になると継続が難しくなるからだ。本業の収入をつぎ込むにしても限界があるし、パートナーの収入に頼っている場合は、事業を継続するイニシアティブが、本人にないということだ。
パートナーが「やめてくれ」と言ったら、従うしかない。継続するためには、どうしても収益が必要になる。
6:クレームにはきちんと対応する
安い価格で商品やサービスを提供する人は、お客さんを喜ばせることで、自分にも喜びを与えていることに満足感を感じているようだ。この点が、価格にこだわる人からすれば、「お遊び」という批判の的になっているのだけど、自尊心を満たすために仕事をすることは悪いことではない。
実際、こうした善意を利用して、ボランティア同然に仕事をさせて、自分は収益を得ている先生ビジネスは多い。これも批判されるべきものでなく、当事者同士の合意があれば問題はない。
ただし、お客さんは喜んでくれるだけでなく、クレームも言ってくる存在であることを忘れてはいけない。モンスター消費者に遭遇しても、商品の提供者としての責任は果たさないといけない。
ちなみに、謝れと言っているのではなく、逃げずに対応することが大切だという話をしている。
7:常に品質の向上に努める
安い価格で商品を提供するということは、ビジネスで収益を上げる人の活動を阻害するだけでなく、安いもの同士の価格競争を生み出すこともあることを知っていただきたい。
例えば、500円のハンドマッサージに人気があれば、隣で300円のサービスをする人が出てくかもしれない。
その時に、「300円はないでしょ」と言うのは、目くそ鼻くそ(失礼)の世界で、500円でサービスを受けてもらおうと思うなら、300円以上の品質を提供しなければお客さんは集まらない。
どんなに価格を安くしても、品質の向上に努めなければその仕事を続けることはできない。
8:お客さんに貢献する
すでにお話ししたように、個人で僕のクライアントになってくれる人は、最低でも年収で1000万円以上の人が多い。それだけ稼ぐということは、提供している商品やサービスもしかるべき価格設定がされている。
ただし、彼ら彼女らがわかっているのは、商品やサービスの価値を決めるのはお客さんであるということだ。
収入とは、お客さんに貢献した度合いによって跳ね返るのだから、どんなに「自分は価値がある」と主張しても、買ってもらえなければ、残念だが価値はないということだ。
この点から考えれば、稼ぎたい起業家がプチ起業家を批判することはお門違いで、「価格を下げるな」というのは、一種の談合に誘っていることにもなる。
僕のコンサルでは、価値とは、お客さん視点を基準にしている。
9:税金の申告をする
仕事をして利益を出せば絶対に必要なことは納税だ。納税義務があるにもかかわらず、申告をしていないプチ起業家も多いのだけど、違法行為なので、僕は申告をしない人はサポートをしていない。
もちろん、稼ぎが少ないので申告の義務がない場合もある。その場合でも、最低限、帳簿は付けていただきたい。
いつ納税の義務が発生するかわからないし、売上と経費を管理するのは、仕事として当然のことだ。
ちなみに、マイナンバーを気にする人もいるが、個人の預金とつながるのは当分先になると予想できる。ただし、マイナンバー以前に国民の義務は果たさないといけない。
10:数字の計算から逃げない
プチ起業ではじめて、本格的にお金を稼ぎたいと思った時に大切なのは、計算から逃げないということだ。
よくあるのだけど、
「いくら稼ぎたいのですか?」
「月収30万円」
「どんな商品を販売しているのですか?」
「5000円のエステと3000円のセミナーです。」
「例えば、5000円のエステで30万円稼ごうと思えば、毎月60人のお客さんが必要ですよね。休みなしで1日2人を相手にすることになりますが、そんなことはできるんですか?」
「無理です」
という具合に、稼ぎたい金額と現実は算数で簡単に計算できる。
がんばっていれば何とかなるという思想を否定するつもりはないのだけど、現実的な計算ができない人は、仕事の継続が難しい。
最初から計算が合うことはないかもしれないけど、少なくとも計算から逃げないことが大切だと考えている。
11:パートナーに感謝する
プチ起業家の多くが稼ぐ必要のない理由は、パートナーの収入で生活することができ、多少の赤字を出しても問題がないからだ。
この点は特に問題はないと考えている。例えば、ピアノの発表会をするために自費で会場を借りて無料でお客さんを招待することもある。
こうした活動を批判する理由はない。仕事だから批判の対象というのも妙で、働かなくても生活ができるならいいことだ。パートナーの収入で生活をしている人の活動を妨害する理由もなく、あまり言いすぎると、「嫉妬しているんでしょ」とあらぬ評価を受けてしまうことになる。
だから、パートナーが経済的に支えてくれている人は、パートナーに感謝して活動を続ければいい。
経済的に支えられている人を依存と呼ぶ人もいるのだけど、
資格試験のための勉強している夫を妻がパートで支える場合は、問題があるのか?
という話になる。
僕は自力で収益を出せるようになったけど、コンサルタントの中でも、奥さんとのダブルインカムで生活を成り立たせている人もいる。
それはそれでいいではないかと思う。
大切なことは、人の意見に惑わされず、
自分は何をしたいのか
お客さんに貢献できることは何か?
仕事を継続していくためになにをすればいいか?
こうしたことを考え、実行し続けていくことが
起業であるということだ。
ちなみに、起業と経営は違うのだけど、話がややこしくなるので、この記事はここまでにさせていただく。
以上の考えに違和感がない人は、プチ起業でもご相談をお受けします。
お問合せはこちらです。
まとめ
いずれにしても、人に批判的な意見を向けることは長い目で見れば発展的だと思えない。「人は人」と考えるのはクールなのかもしれないけど、それぞれの立場を承認してあげることも大切ではないかと思う。
仕事は競争の面もあるのだけど、ワクワクしながら仕事ができるというのも、喜ばしいことだ。
人ぞれぞれ、自分らしく生きたいのなら、人の自分らしくを批判する必要はない。
どんなに賛同を得ても、価値観が多様化する時代においては、どちらかに軍配が上がることはない。
あなたは、自分の自分らしい仕事の仕方を考えればいい。それがプチ起業だとしても、僕は批判しない。
あなたが考えるべきことは、お客さんのことであり、プチとは言え、業を起こした人の責任だ。
世間の論争は無視しておけばいいと思う。